「運動療法実施中の患者さんへのN21の臨床応用」
皆さんが、リハビリテーションのことを聞くのは、痛くてマッサージを受けるとか、筋力訓練をするなど、痛いところを治すのがリハビリテーションという印象が多いと思います。2回目の本研究会でセルフメディケーションとリハビリテーションには関係があると申し上げました。セルフメディケーションのメディケーションは薬と考えると薬のことだけのような感じですが、自分の健康を自己管理するのがセルフメディケーションなので、リハビリテーションと関係があります。
昨年の報告では、患者さんに使うとなると薬では治験を行いますが、N21は食品、サプリメントに属し薬ではないので、治験の代わりに本学では倫理審査を通らなければなりません。その計画のことを昨年報告しました。今年は、この計画が承認されたことと、N21を実際に使っている患者さんはまだいませんが、運動療法としては実際に始めていることを報告します。
このスライドはセルフメディケーション研究会のパンフレットから取ったものです。平均寿命が延びて高齢化社会になったということです。だからといって、皆が健康で生活しているわけではありません。毎日、生活の中で、いろんな病気が潜在的に起こり始めているかもしれません。気がつくと、40代、50代の半分以上がメタボリック・シンドロームの状況になってしまうかもしれません。これが、生活習慣病、すなわち慢性疾患病です。少しでも長く健康な肉体を維持するにはどうすればいいかという疑問が、このセルフメディケーション研究会のスタートです。
このスライドは、生活習慣病、慢性疾患病の特徴です。従来、結核や感染症は原因となる菌を突き止め、それを叩けば治るという図式でした。生活習慣病、慢性疾患病は、食事や生活習慣、運動習慣や遺伝もあるかもすれず、原因が複数要因であることが問題です。今日から生活習慣病が始まりましたと、いわれれば対応しますが、いつから起こったのかわかりません。潜伏期も長いです。食事や運動で改善する先ほどの例もあるように、外部要因で変化する、これもある意味ありがたい話です。
私はリハビリテーションで仕事をしていますので、病気のある、障害のある段階の患者さんを対象とすることが多いです。車椅子や杖を必要としている患者さんです。従来、リハビリテーション以前の段階でも対象になる患者さんがいます。島田先生の例では回復度から見て激しい運動量だと思いますが、私たちの患者さんには足腰などにマイナス効果があるかもしれません。ですから、運動療法にもさまざまのものがあると思います。
ライフサイクルに従い、人間の体は変化します。あるときから病気が起こり、障害が出てきます。
これはパーキンソン病の患者さんです。腰が曲がってしまい歩きにくそうです。また、骨粗鬆症があり圧迫骨折で腰が曲がってしまうことがよくあります。骨格の変形が引き金となり周辺の筋肉が反射的に収縮します。これをスパズムと表現します。肩こりや手術での傷などから起こることもあります。これが起こると周辺に痛み、代謝産物、虚血が出ます。筋収縮の悪循環が起こります。これが長期化すると、筋肉や靭帯に二次的変化が起きます。これがひいては、機能的な活動を低下させることになります。
このように変形がある場合、リハビリテーションでは、症状が悪化する可能性があるので、いきなり運動しろというわけにはいきません。可能な限り痛みの緩和処置をします。痛みが筋肉の収縮が原因であれば、それを除去する。この部分では多少、受身的な治療もありえます。温める、冷やす、マッサージなどです。しかし処置後に、患者さん自身で動かすことが必ず必要です。ですから、さまざまな病気の種類にあわせて、適切な運動を選ぶことが大事になります。
申請して承認された倫理審査のプロジェクトですが、N21の本研究会で骨関節疾患や神経疾患、免疫疾患の方に有効だという話があるので、これらを対象にしています。動脈硬化にも効果があるという報告を聞き、今後、追加することを検討しようと考えています。
とにかく、N21を摂取していただく。ただし、運動療法の併用もキーワードになります。プロトコールとして、スタートと一定時期を経たところで身体的機能や検査データ、アンケートを取って効果を比較したいと考えています。
これは身体機能検査の1つですが、高齢者のバランス機能を見るということで、どのくらい長く手を差し出してバランスが崩れないかのファンクショナルリーチ検査をしたり、10メートルの距離をできるだけ早く歩いて、分速を計算して求める歩行速度、座ってできる高齢者にも負担の少ない筋力測定もあります。
当院には健康スポーツ室があります。アメニティーが良好で快適な場所です。通常のリハビリテーションの訓練室とは異なり、屋内トラックや機材を備えています。その一部のスペースでこのビデオを見ながら運動療法をしています。ただし、激しくはなく、自宅でもできる軽い運動です。
順天堂のスポーツ健康科学科(旧体育学部)の武井名誉教授がパーキンソン病患者さんにこういうビデオをつくっていらっしゃいますが、運動頻度が少なくなったお年寄りの運動に役立っています。これは椅子に座って、バランスが良くない方にもできる運動です。続けると15分くらいですが、我々でもひと汗かきます。鼻から吸い口で吐く深呼吸の練習から始まり、首、足、体幹などのさまざまな工夫した運動がこの中に示されています。
このビデオを患者さんに貸しています。3ないし2週間に1度来院して、運動の新メニューの練習をし、そのビデオを持ち帰って練習していただきます。このような症状日記をつけ、N21を飲んでくださるならその服用について、また、運動療法の実施状況をチェックし、下に各自の症状を書く日記をつけて持参してもらっています。毎回、この日記で練習状況を見ています。ポイントは、家で食卓の椅子に座ってでき、難しくない軽い運動を、持続的にどう行えるかです。これを最初、途中、最後などでチェックし、実際には半年ほどの予定で続けることにしています。
最後に、倫理審査で承認されたことをご報告します。前回プロトコールについて、ご説明しました。慢性疾患、生活習慣病について、どの年齢かどんな疾患を対象にするかで、やり方が違いますが、私たちの対象は年齢が少し高い、どこか病気があり痛みがある人です。リハビリテーションはそんな方のセルフメディケーションの1つだと考えています。まだ、5人の患者さんの中には、N21を服用してその前後で血液検査をする方はいませんが、今の方の中に、希望者がいればすぐにこの結果が報告できるものと考えて、進めているところです。
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