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複合菌発酵生産物質N21とは・・・
複合菌発酵生産物質N21のデータ



長岡 功 教授
順天堂医学部 卒業
順天堂大学院 医学研究科 博士課程 修了
医学博士

主な研究***
生体内殺菌ペプチド(デフェンシン・cathelicidin)の作用と遺伝子発現
生体内殺菌ペプチドの感染症、敗血症への臨床応用
健康食品の細胞機能、血液速度(血液のサラサラ度)におよぼす影響
発表内容要訳 発表内容(スライド)

「複合菌発酵産生物質N21のサイトカイン生成から見た抗炎症効果について」

今まで、N21には血液流動性を改善する、あるいは血液性化学的なデーター、その他のパラメーターにいろんな影響を及ぼす作用があることが報告されているので、それらをおさらいをします。皆様の資料「N21の効能」に記載されているので、ご覧ください。


 N21を人が摂取した場合、コレステロール値を低下させます。以前は高脂血症と言っていましたが、最近は脂質には高い値のほうがいい場合もあるので、脂質異常症と呼び方が変わりました。悪玉のLDLコレステロールや中性脂肪は高くないほういがいいのですが、善玉のHDLコレステロールは、高いほうがいいということだからです。この場合、総コレステロール値で見た場合、N21を1カ月間摂取すると、低下する傾向が見られました。
また、悪玉のLDLコレステロールも、同様に減少傾向があることがわかっています。中性脂肪も、N21の摂取で低下が示されています。また、血糖値も低下傾向が見られます。血圧なども、最高血圧、収縮血圧が若干低下することがわかっています。


血液流動性については、よくテレビでこのような画像を見ると思います。細かい隙間に100マイクロリットルの血液を流して、その通過時間を測定したり、どのような細胞が付着しているかを見る装置です。N21を1カ月間飲み続けた場合、あるいは摂取1時間後で見ると、さらさらになって流れが良くなることがわかります。
通過時間が長いほどどろどろ状態です。摂取後1時間、あるいは飲み続けると血液流動性が良くなる、さらさらになることがわかります。また、便通については、N21を摂取することで、1日平均の便の量、すなわちトイレの回数ですが、これが増え、便通が良くなることが示されています。また、N21を乳酸菌と混ぜてみると善玉の乳酸菌の増殖を促すことがわかりました。この働きが便通を良くしていると考えられます。


以上をまとめると、N21は悪玉のLDLコレステロール、中性脂肪、血糖値、血圧を低下することによって、血液流動性を改善すると考えられます。また、乳酸菌を増殖させることによって、便通を良くすることが考えられます。また今回は示しませんが、以前の実験でラットにストレスを与えても、リンパ球の比率が割合安定化している。いわゆるストレスに耐えられる効果も証明されています。また、森近先生の研究で、患者さんがN21を摂取するとリンパ球数が増え、一方、好中球数が減ることによって抗炎症作用が期待されるということが示されています。


ところで、N21を含む乳酸菌製品が世の中で使われています。その代表がヨーグルトです。期待される効果として、便通が良くなる、感染防御に効く、免疫調節作用がある、腸内菌のバランスを良くする、腸内環境を良くする、発ガンリスクの低減などです。
効く仕組みですが、乳酸菌は生きたまま到達しにくいのですが、生きて到達すれば有機酸を出して有害菌の増殖や腐敗防止をして腸内の菌叢(フローラ)を正常化させるのではないかと考えられています。あるいは菌が死んでも菌が有害物質を吸着したり免疫活性する物質が腸や全身に働いて、免疫機能を高めることが期待されています。


ところで、いくつかの言葉の定義をはっきりさせたいと思います。プロバイオティクスは、ビフィズス菌に代表される乳酸菌の生きた菌を腸内にそのまま送り込む方法です。しかし、胃酸などで菌が死んでしまうことが多いようです。
プロバイオティクスは菌を送るのではなく、善玉菌の成長を促すオリゴ糖などが市販されています。
バイオジェニクスは免疫不活化作用のあるような生理活性物質を届けて、腸内細菌に働きかけます。菌そのものではないので、胃酸でだめになることもなく、腸内で働きえます。N21はこれに相当します。N21には菌が入っていません。菌由来の物質であり、それが免疫機能に働きます。すなわち、バイオジェニク的な働きがあると考えています。N21は、乳酸菌、酵母菌、酢酸菌が含まれていますが、複合微生物の培養した際の発酵作用によって産生された菌体成分を含む物質で、バイオジェニクスに相当します。


これまでに判明している作用には、血流速度(さらさら)を速める、悪玉菌の減少、中性脂肪の低下、リンパ球の増加、Tリンパ球の比率の安定化などが報告されています。


以上から、私たちはN21に免疫機能の強化、あるいは抗炎症作用があるのではないかと考えて、実験を進めています。これは昨年、使用したスライドですが、免疫機能を見るのに、白血球とそれらをつなぐサイトカインネットワークが体内で働いています。


また、生体防御に働く白血球がありますが、いくつかに分かれます。マクロファージ、単球やリンパ球のT細胞、抗体をつくるB細胞(指令するのがTリンパ球)、バイ菌をやっつける好中球、寄生虫感染に関係する好酸球、アレルギーに関係する好塩基球、マスト細胞があります。
これらの細胞は、独立して働く場合もありますが、互いにサイトカインというタンパク質でネットワークを形成し、相互に作用しながら生体防御に働いています。


今回は特に、Th1と Th2バランスについて、関連したサイトカインを測定したので、ご紹介します。T細胞にはヘルパー細胞とキラー細胞があります。ヘルパー細胞(HはヘルパーのH)について注目すると、Th1と Th2がいます。これは未熟なTh細胞から分化しますが、これが司令塔マクロファージから出てくる物質によって分化します。
Th1が分化・発達すると、細胞性免疫が強化され、ガン細胞をやっつけますが、過度になると自分自身を傷つけたり、炎症が悪くなることがあります。一方、Th2細胞は、抗体を産生します。この疫性免疫が過度になるとアレルギー反応を強くなることがあります。
Th1と Th2が分化する際は、いろいろなサイトカインが働きます。Th1にはIL-12(インターロイキン)、インタフェロン-γ、IL-2、TNF-αなどが働きます。Th2には、IL-4、-6、-5、-10が働きます。N21の摂取によりこのようなバランスの変化すべてを計測するのは大変なので、Th1には、IL-12、インタフェロン-γ、TN-αについて、一方、Th2についてはIL-4、-6、-10に絞りました。
資料にありますが、昨年度、マウスにコントロールとして水道水、もしくはN21を摂取させて実験した結果、Th1、2のサイトカインの両方とも抑制されるような傾向が得られました。しかし、N21は乳清(ヨーグルトの上澄み液のようなもの)を元につくられています。そこで、乳清を対象に再度、N21を摂取させてサイトカインを測定しました。また、炎症のメディエーターであるMCP-1も測定しました。


乳清、N21を摂取させて3週間飲ませました。体重変化と摂取量をチェックし最後に心臓採血をし、サイトカインを測定ました。「サイトカイン-ビーズ-アレイ」法という最新の方法で、1つの試験管内で全部のサイトカインを同時測定しました。


結果として、1.5倍に希釈したN21と乳清どちらも順調に体重が増加しました。飲水量はほとんど差がありませんでした。Th1のサイトカインのIL-12、インタフェロン-γ、TNF-αについては、N21の場合は抑制傾向が認められました。Th2ではIL-6は若干抑えられているだけですが、IL-4、-10については検出感度以下だったことでかなり減少していました。
全体として、Th1と Th2は抑制していますが、Th2はかなりの抑制傾向がありました。炎症性のサイトカインの1つMCP-1も抑えられていて、抗炎症効果があることがわかりました。


まとめのスライドです。Th1とTh2はT細胞がIL-12およびIL-4の作用をそれぞれ受けて分化しますが、Th1とTh2細胞は、それぞれ、インタフェロン-γ、TNF-αおよびIL-6、IL-10の産生を介して、それらが自身には促進的に働きますが、相手には抑制的になり互いにバランスを保っています。
たとえば、Th1が活性化すると細胞性免疫が活性化し、いい意味で生体防御的に働き、感染防御や抗腫瘍作用を及ぼしますが、過度になると自己免疫疾患や炎症を増悪させてしまいます。一方、Th2に作用が傾くと、抗体が産生されて疫性免疫が活性化され、いい意味では殺菌作用が示しますが、過度になるとアレルギー反応などが起きます。


今回の研究も前回同様、再現性がありましたが、N21の摂取でTh1、Th2のサイトカインがともに低下することがわかりました。したがって、互いに抑制されバランスがとれて、抗炎症効果などが期待されると考えられます。また、どちらかというとTh2側が抑えられていたので、どちらかというとTh1側に働いて、臨床症例にあったように抗ガン作用をもって働くことも期待されます。まとめとして、N21はTh1、Th2どちらも抑えて、炎症などの免疫機能を安定させる、あるいは、どちらかというとTh1側に働いて抗腫瘍作用が期待できるという結果が得られました。以上です。


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