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複合菌発酵生産物質N21とは・・・
複合菌発酵生産物質N21のデータ

 伊藤 茂 先生
発表内容要訳 発表内容(スライド)
 葉酸が問題になっています。薬局、薬剤師さんの参加が多いと聞いています。妊娠者、妊娠の可能性のある人に積極的に葉酸を勧めてください。
勧める理由を解説します。葉酸はビタミンB群の一種です。生体内ではDNAの合成、細胞分裂に深く関与しています。若年女性に推進する1日の摂取量は240μgです。葉酸を多く含む食品は緑黄色野菜であるホウレンソウ、春菊、グリーンアスパラ、魚、ゼンマイ、ワラビ、ふきのとう、クワイ、白菜。大豆、ソラマメ、納豆。アボガド、パパイヤ、マンゴーです。
 日本人の1日の摂取量240μgには達しています。15歳から19歳、先ほどの食品の内訳からすると、年齢と共に葉酸の摂取量は野菜を取る人が多くなっているため増えています。それでは特に葉酸を摂る必要はないかというと、そうではありません。妊娠女性はこれに200μgの付加を必要とする、厚生労働省からの推奨が出ています。
 20から29歳、30から39歳、妊娠年齢は高齢化していますが、これらの方は足りません。440μgが必要なところ300μg程度しか摂っていないのです。妊娠中に積極的に葉酸を摂ってもらわなければなりません。
 その理由です。怖い二分脊椎症発症のリスクにつながるからです。この症例を最初に報告したのはイギリス人です。イギリスにこの病気が多く、イギリス政府はこの発表後、葉酸を摂取するように指導しました。効果てきめんで減少しました。葉酸は二分脊椎症にいいといわれています。日本での二分脊椎症の発症数は変わりばえしないか、少し上がっているのではないかと、厚労省は気にしています。拡大して見ると、1974年から98年まで微増しています。日本人は馴染みの薄いサプリメントの一つですが、二分脊椎症を見る限り増加傾向にあるので、放置できない問題です。現在はイギリスよりも日本人のほうが発症率は高いです。
さて、二分脊椎症はどんな病気でしょうか。(右図参照)重度になると、瘤となって外に飛び出してしまったり、神経組織が剥き出しになることもあります。こうなった場合は神経障害が頻発になります。これらの病変がある場合は、直腸膀胱障害は必発です。こういう病気にお子さんがなったご家庭はミゼラブルです。
私は超音波の専門医ですので、多くの患者さんを診ています。こっちが頭で、こっちがお尻です。ここから背骨がYの字に割れているのがわかります。ここの部分は神経が開放されてしまっているので、剥き出しになっているだろうと思いました。診断して帝王切開で出産すると、こういうふうに折れて神経が剥き出しになって生まれてくるお子さんもいます。この予防が葉酸の服用でできるならこんないいことはありません。
関連する病気に無脳症があります。最近は超音波で早期発見でき、わからずに生まれてくることは少ないです。初期でどう見えるかです。3Dの超音波でわかりやすくなっています。これは普通の子です。足がここに見えて、肋骨が、耳、手が見えます。
これが無脳症だと、足、手、背骨がわかりますが、頭蓋骨がありません。脳が崩れているようにびろびろと出ています。このような胎児がお腹にいると、羊水中の羊水のアルカリ性で頭の脳が解けてしまいます。そこで、最終的に無脳症になります。葉酸がこのような予防にもなることがわかっています。もちろん、この病気の場合は生存は不可能です。妊娠に恐怖心が生まれ、家庭が不幸になります。
 なぜ、葉酸が不足すると二分脊椎症や無脳症になるのか、葉酸が予防になるのか。葉酸の代謝に関係しています。葉酸は代謝されることでホモシステインが分解されます。ホモシステインが多くなると、神経細胞の発達に関与するレセプターに対して一方的に作用するので、神経幹の形成を障害するといわれています。
 ホモシステインの増加を予防するのが葉酸です。代謝経路を見ると、葉酸は50のメチレンエチレン葉酸に分解されます。ここにこのような酵素が入っています。メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素です。このメチレンテトラヒドロ葉酸がホモシステインからメチオニンに介在する酵素となる補酵素になるので、葉酸を摂取することでホモシステインが減少するのです。つまり、葉酸摂取が低下すると、この酵素はすべて減少します。そうすると、ホモシステインが代謝されなくなるので、エチオニンが減少して、神経幹障害を引き起こす、というメカニズムだと解説されています。
 患者さんを一人紹介します。28歳の初産婦です。良く勉強されていて妊娠初期から当院を受診しています。サプリメントに葉酸を服用していました。ところが妊娠11週に赤ちゃんの見え方が変だということで、私のところにみえました。2Dの写真ですが、こちらが赤ちゃんの背中、背骨が見えています。ここが顔ですが、すとんとありません。3Dで見ると、頭蓋骨がなくて脳自体が見えていました。将来的には無脳症になると説明し、人工中絶をしました。
 この方は葉酸を服用していたのになぜ? 実は葉酸代謝に個人差があるといわれています。葉酸の吸収力、腸内環境の違いかもしれません。もしくは葉酸代謝酵素、遺伝的要素の違いかもしれません。これは残念ですが、研究は進んでいません。こちらは最近、少しですがわかってきました。関係する酵素は、MTHFR(メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素)の遺伝子配列の違いによって、葉酸の酵素活性が変わってくるのではないかといわれています。
 医学雑誌『ランセット』で、1995年に発表したデータです。MTHFRの遺伝子だけを解析して、本来なら6、770番目のマッタンCがTに変換されてしまっている。これを二分脊椎症の患者さんご自身、その父母とコントロールで調べました。変異が見つかったのが最初の方で5%、二分脊椎症の患者さんで家庭では16、10、13%と高い数字になっています。このような遺伝子多型の患者の血液を調べると、この酵素が弱い、葉酸値が低い、ホモシステインが高いなどの傾向がつかめました。これが『ランセット』で発表されたのです。つまり、葉酸を飲んでいても発症することや、とはいえ予防効果もあることがわかっています。 妊娠中の葉酸の投与量はむずかしい問題ですが、勧告を出している国もあります。日本は遅れています。オーストラリアでは、妊娠しそうな人には0.5mg以上の投与。葉酸を含む食品をまず食べて、プラス0.5mgをサプリメントで摂るのです。カナダでは0.4mgが基準ですが、0.8mg以上をサプリメントで摂取すること。中国では日本よりも早く、0.4mg以上をサプリメントで摂ること。アイルランドでは0.4mg以上。ニュージーランドは非常に高くて、5mgです。イギリスが0.4mg、米国が0.4mgと勧告しています。
 対象は、すべて妊娠を計画、妊娠しそうな人です。妊娠7週から8週で神経幹は出来上がってしまうので、妊娠前の人が対象です。生理が遅れて妊娠を疑うのは妊娠5週から6週ぐらいからです。ここからの服用では効果が不十分の可能性があります。ましてや超音波で見えるときでは遅いのです。ですから、妊娠しそうな人には積極的に葉酸を服用してもらうことが大切です。
 厚労省は勧告を出しました。対象は妊娠を計画中の女性。時期は妊娠1カ月以上前から3カ月ぐらいまでの間です。これ以降服用しても二分脊椎症は予防できません。ただ、ホモシステインは血圧を上げる作用があるので、妊娠中毒症の予防になるともいわれており、期間以上服用し続けても問題はない、と私は思っています。
 摂取方法です。「葉酸及び他のビタミンを多く含む栄養のバランスがとれた食事と、1日400μgの補助食品からの摂取が良い」と情報提供することです。野菜の摂取を350mg程度にすると足りるといわれていますが、吸収力には個人差があり葉酸利用効率が不確定なこともあるので、サプリメントでの摂取が必要です。場合によっては、野菜よりもサプリメントのほうが便利です。諸外国の報告でも食生活プラス、サプリメントを推奨しています。
 注意点として、例外を除き1日あたり1mgは超えるべきではないと、厚労省がいっています。医者が処方する量は多いです。ポリアミンは1錠5mgです。普通の方はサプリメントで十分です。
 来週の日曜日に、「第58回日本産婦人科学会」があり、「適切な妊娠中の栄養管理」をテーマにシンポジウムがあります。そこで葉酸を話す先生がおられます。横浜市立大学の石川先生です。その小論からデータを拝借しました。
 先ほどの厚労省の推奨の認知度を、アンケートで調査したそうです。約10%しか認知されていませんでした。葉酸の摂取者は2002年でちょっと高い数字がでていますが、わずか2%から3%という数字です。日本人にとって、改善の見込みがたっていないのが現状です。
薬局などみなさんの協力が絶対に必要です。
妊娠中のサプリメントをまとめます。脂溶性ビタミンは妊婦にとって危険です。ビタミンAの大量摂取はいけません。原則は水溶性ビタミンのみになります。妊婦貧血があるので鉄分、妊娠中毒症にはビタミンEや葉酸。ただし、葉酸はビタミンEが脂溶性なので投与には注意が必要です。二分脊椎症には葉酸です。便秘にN21が有効になってくるかもしれません。
サプリメントの投与の注意点です。水溶性ビタミンCを大量摂取すると尿を酸性にします。妊婦は子宮に圧迫されて尿管が太くなっています。腎臓から膀胱への尿の移行が悪くなっているので、尿酸が高い妊婦であれば尿路結石の発症率がぐんと上がります。同様に、カルシウムも大量摂取には結石のリスクが伴います。
可能な限り食品から摂取するように勧めてください。これには理由があります。日本人の妊娠中の栄養摂取量と赤ちゃんの出生体重を表でまとめたものです。この棒が日本人の妊娠中の栄養摂取量です。だんだん減少しています。女性のダイエットブーム、出産後の体型の早期回復を競う傾向などが原因です。
産婦人科医と助産師にも責任があります。妊娠中に肥りすぎると妊娠中毒症になると警告してきたのですが、最近、これは嘘だとわかってきました。厚労省も妊娠中は最低8kg、多くて13kgの体重増加を勧めています。
栄養摂取量の低下は、赤ちゃんの出生体重の減少を引き起こしています。先進国で出生体重のめざましい低下は日本だけです。『バーカーセオリー(成人病胎児起源説)』といって、小さく生まれた子どもは将来、高血圧、冠動脈、2型糖尿病、骨そしょう症という成人病の罹患率を上昇させるという疫学調査が、イギリスのデビット・バーカー医師から出されました。これはその論文のデータの一つです。心筋梗塞で亡くなった患者の生まれたときの体重を見ると、男女を問わず小さく生まれています。男性に特に顕著です。このデータから将来の日本人に懸念がありますが、研究は途中です。私はメスラットを使っています。妊娠中に低蛋白栄養にすると、子どもは175日目に大人になりますが、血圧は高いです。冠動脈のAZAN染色をしてみると、上の段は普通食のラット、卵巣摘出、非摘出、低蛋白栄養の卵巣非摘出、摘出です。ブルーは繊維化が激しい部分を示しています。明らかに妊娠中、低蛋白栄養だったラットのほうが冠動脈AZANの繊維化が強く進んでいることがわかります。
将来、心筋梗塞のリスクが上がっている証拠にもなります。
 以上をまとめます。妊娠を考えている女性への積極的葉酸服用の有用性はほぼ確立されています。今後、いかに浸透させていくかは私たちの重要課題ですので、是非ともご協力をよろしくお願いします。妊婦さんの摂取量は低下しています。赤ちゃんの出生体重は減少傾向にあり、妊娠中の適切な栄養管理の指導では、補助食品を利用することも含め大切なことだと思われます。


















































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