発表内容要訳 |
発表内容(スライド)
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セルフメディケーションでなぜリハビリテーションなのかを話していきます。リハビリテーションと聞くと、有名な野球監督が脳梗塞になりリハビリテーションをしていることを思い浮かべるでしょう。脳梗塞になってリハビリテーションを受けるのですから、なぜ今更、セルフメディケーションなのかと思われるのではないでしょうか。
そこで、「新たな考え方」が出てくるわけです。リハビリテーションは日本になかった考え方です。時代により考え方は変化しますが、共通しているのは、病気になったり障害をもった方の復権を目的にすることです。ジャンヌ・ダルクが宗教裁判で名誉失墜しました。しかし復活したということで、そこにリハビリテーションが出てきます。
変遷を話すために歴史を振り返ります。日本では終戦後にリハビリテーションが導入されました。私の記憶中ではこんなことから始まっている、という写真が後から出てきます。一時日本も景気が良く、老人医療費は無料という時代もありましたが、最近は医療費の抑制からリハビリテーションも影響を受けています。今までのサービスができなくなったり、4月以降、リハビリテーションはマスコミなどで取り上げられています。リハビリテーションは時代の影響を受けいろんな考え方があるということです。
これは写真家のロバート・キャバが撮った浅草の写真です。傷痍軍人の方が町に出てきているこの景色が私も印象に残っています。リハビリテーションと認識した最初だと思います。当初は神経内科を専攻していました。宮城県鳴子町に東北大学鳴子分院がありました。源泉が背後ろにあり、硫黄のガスが発生していました。そこでリハビリテーションの勉強をしました。結局、温泉医学は医学に関係ないのではないか、すなわち、温泉である必要はなく、温かいお湯が沸かせればかまわないという時代がありました。鳴子分院も1994年に閉院し、更地になってしまいました。
ところが、最近、温泉についていろいろなことがいわれています。サウナに入ると、歩けなかった人でも心不全が良くなるといわれています。昨年のリハビリテーション学会で「補完代替医療とリハビリテーション」をテーマにした教育講演がありました。「補完」とは現代医学にないもの、別の方法を「代替」といい、これを合わせて全体的な人間としてのリハビリテーションをめざそうという考え方が取り上げられました。
鳴子分院閉院時に本が出版され、その中の古い時代の温泉療法の写真です。これはサウナです。これが最近認められているので不思議な思いがします。これは温泉プールです。私が行ったときもまだありました。
昭和30年代には、こんな場面がリハビリテーションの中心でした。最近も、リハビリテーションにこんな場面が見られます。順天堂分院の高等高齢者医療センターにある施設ですが、きれいになっています。リハビリテーションではこういう訓練も大事ですが、設備、道具も工夫がされています。これはポータブルトイレですが、バランスを崩しても倒れないりっぱなものです。
これは牽引機で、昔とあまり変わっていません。今はプールである必要はなく、患者さんにこの中に入ると、これが上がってきて床が動くようになっています。限られたスペースの中で、温泉やプールと同じことができる仕組みです。最近のリハビリテーションの風景です。高齢化社会を迎え、高年齢者が占める割合が増加しています。年代とともに死亡原因として、戦前は結核、肺炎が多かったのですが、現在はもっぱら脳血管障害、心筋梗塞、ガンがメインになりました。慢性疾患が世の中の疾病増の中心になっています。
高齢者の中には転倒が原因で寝たきりになることが問題になっています。脳血管障害、高齢による廃用症候群、転倒があり、これらの頻度を減らすことが大問題になっています。
生活習慣病、文明病は慢性疾患と同一ですが、原因は必ずしも一つではなく、いくつかが絡み合っています。脳梗塞にはたくさんの原因があります。危険因子やリスクファクターです。これらのたくさんのものが絡み合って脳梗塞になると、一つだけ注意をすればいいということになりません。
脳梗塞の原因である動脈硬化がいつから始まり、どうなっているのかがわかりません。その潜伏期間も長くなります。一方、危険因子のいくつかは、生活形式を変えると変化させることができます。年齢、性、人種、家族暦は難しいですが、食物、スポーツ、アルコールの摂取などはコントロールできます。これらは行動変容で変えられる危険因子です。これらが慢性疾患の特徴です。
リハビリテーションは脳梗塞になってしまった人の社会復帰を図るものです。車椅子の方の社会復帰がリハビリテーションの旧来のテーマでした。若くて、病気になっていない、検査上異常があっても症状がない未病、放置によりある時期になって発病する。この経過のなかで、リハビリテーションは最後の部分をアプローチするだけではなく、その手前、障害されていない筋肉や関節の働きを良くすることが対象になってきます。リハビリテーションとしても前の段階から管理しうるものがあるだろう。これをリハビリテーションと呼ぶのか、スポーツを習慣的に行うと考えるのかはさまざまです。
これは慢性疾患の特徴です。予防にはどんな段階があるかをまとめました。脳梗塞は従来から、リハビリテーションの大目標です。脳梗塞はある日突然発症し、そこから2、3カ月、6カ月とリハビリテーションを頑張ります。ところが、脳卒中以外にも変形性関節症、膝や腰の痛みを訴える方がたくさんいます。入院すると廃用症候群が起こります。筋肉、関節、呼吸器、循環系の働きが低下します。
間接的にブラッシュアップすると、機能の多きな低下を防げる役割がリハビリテーションだという考え方があります。今までは入院して歩けるようにならないと社会復帰できない現実がありました。介護保険ができて6年ほど経っていますが、在宅でサービスが利用できるようになったために、自宅に帰る人が増えました。
一方、介護保険費が膨らみ、問題になっています。介護度を増やさない対策が求められ、日ごろの演習、罹患前に保健事業を導入して病気を未然に防ぐ考え方が盛んになってきています。
慢性疾患や高齢者に対するリハビリテーションで、頑張れという方法は不十分になっています。92歳のある患者さんを紹介します。昔であれば、静かに自宅で暮らすことを勧めがちでした。昨年、転倒して大腿骨骨折をしました。金属で固定しているので、体重をかけても大丈夫です。痛みもなく傷が治れば歩行してもいい方なのですが、上手くいきませんでした。そこでリハビリテーションに依頼されました。
夜に足の痛みが強くなり、むくみも出ました。リハビリテーションが原因だと思ったようで、「痛くなるからリハビリテーションに行きたくない」という状況になってしまいました。自宅に帰すこともできなくなりました。手術した右足に浮腫があり太くなっています。
リハビリテーションにはいろんなアプローチがあります。患者さんの心のケアをするのもその一つです。この方に心理検査をしました。整形外科医は骨に異常はないと診断しているので、痛みは別からきているはずです。アンケート式で、不安や緊張、鬱などの項目が点数で出てくる「フォームス」という…。黄色はその部分が高い値です。茶色になると要治療です。この方は鬱のスコアが高く、痛みには鬱が影響している可能性があります。
訓練で頑張れというだけでは不十分です。このくらいの力を出してほしいと画面に表示され、出した力の大きさが視覚で捕らえられる仕組みです。一種のバイオフィードバックです。実行した結果が目の前に表れるばかりでなく、足でこいでいると画面が変わり、速度も速くできます。幸いこの方は、傷みを訴えることもリハビリテーションを休むことも少なくなって、退院しました。92歳ですが、自宅の2階への階段を上り下りができるそうです。
リハビリテーションでも、カウンセリング、練習量や成果の変化を毎回説明する行動療法、リハビリテーションの誤解や齟齬を解く認知療法などをしています。2次群も含め、慢性疾患に対して、障害の前の段階でリハビリテーションをしようということで、痛みからリハビリテーションを避け、その結果機能が衰えてしまうなどの2次的障害を予防すること、残った機能を向上させて使うこと、道具の活用、環境改善、生きがいを持つことなどが大事だと思います。最近、マスコミで機械を使う「パワーリハビリテーション」が取り上げられています。これは高齢者や慢性疾患の人には危険です。使う場合は医学的なケアが必ず必要です。
以上、リハビリテーションとセルフメディケーションの関係を説明したきましたが、障害を負う前段階で医学的管理の下でリハビリテーションを行うことが必要です。手足の関節だけを知っていればいいということはなく、循環器、呼吸器などさまざまなことを知り、共に行っていくスタンスの必要性を私たちは感じています。
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