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複合菌発酵生産物質N21とは・・・
複合菌発酵生産物質N21のデータ

当研究会発表会の共催企業でもある株式会社フィスの研究機関が
N21を構成菌とするPFT株菌発酵乳について研究結果を発表いたしました。

乳酸菌・N21の構成菌である酵母複合発酵乳由来新規低分子抗菌物質
□ 発表日

□ 発表場所
平成22年3月29日 AI会場11時

日本
農芸化学会2010大会内
発表者
フィスプロバイオ研究所 主任研究員 谷 久典 農学博士
要旨

【目的】乳酸菌と酵母の複合発酵乳(PFT株菌発酵乳)の生理活性作用の一つに腸管免疫を正常に機能させる作用がある。これらの免疫系を充分に機能させるには、正常な腸内細菌叢による短鎖脂肪酸類の産生とウエルシュ菌に代表される腐敗菌の低減が必須である。ケフィア摂取者の腸内細菌叢ではウエルシュ菌占有率が激減しているとの知見があることから種々の菌に対する抗菌物質のスクリーニ ングを行った。

【方法】PFT株菌発酵乳にn−ブタノールを加えブタノール層を回 収した。これを減圧下で濃縮・乾固させ、分画分子量1kDaで透析を行なった。透 析外液を回収し、凍結乾燥したものを試料とした。各種微生物に対する抗菌活性をDiskperfusion法及び濁度にて測定した。

【結果と考察】分子量1kDa以下と推定される本物質のスペクトルは広く、E.Coli、Clostridium属、及びBacillus属等への抗菌作用を認めたが乳酸菌や酵母等へのその作用は認められなかった。また、ボランティア試験での検討よりウエルシュ菌占有率が顕著に低下していた。この低下作用は分子量1kDa以下の本物質の作用によるものであると考えられた。

乳酸菌と酵母の複合発酵乳は古来より東欧諸国で飲用されているものであり、様々な生理活性作用が明らかにされています。これらの機能の一つに腸管免疫を正常にさせる作用が上げられます。これらの免疫系を充分に機能させるには、正常な腸内細菌叢による短鎖脂肪酸類の産生とウエルシュ菌に代表される腐敗菌の低減が必須であります。乳酸菌と酵母の複合発酵乳、いわゆるケフィア摂取者の腸内細菌叢ではウエルシュ菌占有率が激減しているとの知見があることから、我々は複合発酵乳ケフィアの一種でありますPFT株菌発酵乳を用いて種々の菌に対する抗菌物質のスクリーニングを行ったところ興味ある知見が得られました。
PFT株菌グレインには乳酸菌としてLactobacillus kefiri、酵母としてKazachstania turicensis、Kazachstania unispora、及びKluyveromyces marxianus の乳酸菌1種及び酵母菌3種をメインとし既に同定し、これら以外に未同定ではありますが乳酸菌2種及び酵母1種が更に含まれている事を明らかにしています。このPFT株菌グレインに市販牛乳を加え25℃、3日間発酵させた濾液を用いました。1Lの濾液に同容のn−ブタノールを加え十分に混合しovernightで静置させました。次に遠心にてブタノール層と水層を回収いたしました。その後ブタノール層を減圧下で濃縮・乾固させ、これを少量の脱イオン水に溶解させガラスフィルターで濾過後、分画分子量1kDaの透析チューブにて脱イオン水に対して透析を行ないました。透析外液および内液をそれぞれ回収し減圧下で濃縮し、凍結乾燥したものを試料A及び試料Bといたしました。水層画分も同様の操作を行いそれぞれ試料C及び試料Dとしました。抗菌活性はDisk perfusion 法及び660nmの濁度を測定する事で行いました。
ヒト糞便の一部を滅菌生理的食塩水で希釈しGAMブイヨン(日水製薬社製)を用いて嫌気的に24時間培養し、これをシャーレに採りプレートカウントアガー培地を加えプレートを作成しました。試料AからDを10mg/mlになるように脱イオン水に溶解させ50μl吸収させた直径8mmのペーパーディスク(8mm)を寒天平板培地にのせ、35℃、24時間培養を行い、阻止円を観察した。試料A、即ちブタノール抽出1kDa以下の画分に強い抗菌活性が認められた。
Disk perfusion 法で用いた菌液に試料AからDを2mg/mlになるように添加し35℃、24時間培養を行い、濁度を測定し、試料を添加しなかったコントロールの濁度を100とした時のそれぞれの濁度を図に示した。試料C及びDは約140%と阻害活性を示しませんでしたが、試料A及びBは増殖率が約10%及び45%と阻害活性が認められました。Disk perfusion 法と同様にブタノール抽出1kDa以下の画分の試料Aに強い抗菌活性が認められたことから試料Aについて詳細に検討しました。
試料Aについて大腸菌に対する増殖抑制作用を検討いたしました。大腸菌株を0.5%塩化ナトリウム加Nutrient Broth に縣濁し、試料Aを4、2、1.5、1、及び0.5mg/mlになるように添加しました。35℃、24時間インキュベート後、濁度を測定し試料Aを添加しなかったコントロールに対する増殖率の割合を図に示しました。阻害活性は濃度依存的でありました。2mg/ml以上の添加で80%以上の増殖率が抑制されました。
次に様々な菌に対する抗菌活性をDisk perfusion法にて検討いたしました。乳酸菌や酵母に対して5mg/mlになるように添加したところディスクの直径の8mm以上の阻止円が認められなかったことからこれらの菌や酵母に対しては阻害活性が認められないことが明らかとなりました。これらの菌や酵母以外の病原菌や有害菌に対しては程度の差があるものの総ての菌に対して抗菌活性を示しました。サルモネラ菌やブドウ球菌に対しては直径が13から14mmと弱い抗菌活性を示し、枯草菌やリステリア菌に対しては直径が20から22mmと強い抗菌活性を示し、大腸菌やウェルシュ菌は15から16mmとその中間の活性を示しました。
これらの結果からヒトに対して有害菌には抗菌的にまた、有用菌に対しては抗菌作用を示さなかった事からPFT菌株発酵乳を摂取する事で腸内環境を改善できる事が示唆された為、ヒトボランティアによる予備的検討を行いました。対象者は32歳から56歳までの成人男性5名。PFT菌株グレインにて発酵させた発酵乳を回収し、85℃、15分間殺菌したものを1日当たり150ml、約コップ1杯を摂取させました。摂取前と摂取1週間後の糞便中ウェルシュ菌、ビフィズス菌及び乳酸菌を測定いたしました。
(1)はレシチナーゼ陽性Clostridium属の、(2)はビフィズス菌の、(3)は乳酸菌の摂取前後の菌数の変化を示しています。ウェルシュ菌は約106個から105個に減少しました。これに対して乳酸菌は105前後から107個と増加しました。ビフィズス菌は摂取前後で殆ど変化がなく109個でありました。これらの予備的検討の結果からPFT菌株発酵乳を摂取する事で腸内有用菌の占有率が上昇する事がわかりました。
 以上の結果を纏めますと次のようになります。
PFT株菌発酵乳よりブタノール抽出した低分子物質について各種菌株を用いて抗菌活性を測定しました。
(1)本物質は腸内細菌由来嫌気性菌に対して抗菌活性を示しました。
(2)本物質はE. coli 、S. enterica、 B. subtilis、L. monocytogenes、S. aureus、及びC. perfringensなどの有害菌や病原菌 に対して抗菌作用を示しましたがL. thermophillus、L. casei 、及びS. cerevisiaeなどの乳酸菌や酵母に対してはその 作用は認められませんでした。
(3)ボランティア試験の予備的検討により消化管内のレシチナーゼ陽性Clostridium属の占有率の減少が認められましたが、乳酸菌及びビフィズス菌のそれは増加していました。
 以上の結果からPFT株菌による複合発酵乳中のブタノール抽出した分子量1kDa以下の低分子物質には有害菌や病原菌に対する抗菌作用を示す事が示されました。また、この作用はボランティアによる予備的試験においても同様の作用が認められたことから、本物質は腸内細菌叢のウェルバランスに寄与する事が示唆されました。
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